腰痛症

いまや日本人の4人に1人は腰痛で苦しんでいると言われ、高齢者だけでなく若い人にも多いとされています。





腰痛症とは?

腰や背中、お尻に痛みを訴え、ときに下半身の痛みやしびれを伴います。腰痛を引き起こす原因としては、重たいものを持つ作業や精神的ストレス、加齢による関節の変形などがありますが、約85%が原因不明です。 原因が分かるものは、大きく脊椎・椎間板・脊髄性・筋・筋膜性・内臓性に分類され、脊椎・椎間板・脊髄性の原因疾患の多くは、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症、椎体骨折圧迫などです。 また、内臓性・腫瘍由来でも腰部の痛みが発生するため、何をしていなくても痛む、夜間に痛む、痛みがどんどんひどくなっている、などの症状がみられる場合は注意が必要です。

急性腰痛(いわゆるギックリ腰)
急性期を経て4週間程度で緩解に向かいますが、その後約60%が再発するか、一年後も症状を抱えていると言われています。
腰椎椎間板ヘルニア
腰椎の椎間板の髄核が突出して神経を圧迫する疾患です。20~40歳代の若年者に起こりやすく、スポーツや腰に負荷がかかる労働などが引き金となることが多いです。腰痛、一側下肢の放散痛、感覚障害、脱力の症状を呈します。椎間板ヘルニアは2~3ヶ月で自然退縮するものも少なくなく、保存療法が第一選択になります。
腰部脊柱管狭窄症
多くは加齢による変性(変性脊椎すべり症・変形性脊椎症)が原因で、脊柱管や椎間孔が狭くなり、神経を圧迫し神経症状を呈する症候群です。症状は徐々に進行し、お尻から下半身にかけてのしびれや痛み、脱力、神経性間欠跛行(※しばらく歩行すると痛みやしびれの出現で歩行困難となるが、前かがみで休むと症状が減ったり無くなったりする症状)がみられます。治療は自然軽快することも多く、まずは保存療法が行われます。



中医学で考える腰痛症

中医学では、腰は「腎(じん)の府」と呼ばれ、腎は腰部に位置します。腎とは、五臓のうちの一つで先天の精(生命力の源)を蓄える重要な臓腑です。そのため、腰を日頃からケアすることはとても大切です。また、体の抵抗力や免疫力が弱っていると、外界からの邪気(風、寒、湿など)が経絡に侵入して、痛みを生じさせます。

また、生命力の源である腎の精気「腎精(じんせい)」は、20~30歳代でピークをむかえ、40歳を過ぎると徐々に衰えていきます。腎精が衰えると、外の刺激から体を守るバリア力も衰え、外邪の侵入を容易にします。そのため、冷たい風や雨にあたるなどをキッカケに外邪が侵入し、気血の流れを滞らせ、肩の痛みを生じさせます。肩の痛みが長引くと、さらに局部に気血が巡らなくなり、関節は拘縮して肩を挙げることが出来なくなります。

腰痛症の鍼灸治療

腰痛は腰部の「不通則痛(ふつうそくつう)」や「不栄則痛(ふえいそくつう)」という状態で、“気血が通じないと即ち痛む”、“気血の栄養が栄えてないと即ち痛む”という意味です。鍼灸治療では「通則不痛(気血が通ずれば、すなわち痛まず)」の原則にのっとり、経絡の巡りを正常な状態に回復させます。経絡上のツボを刺激して、気血の流れを改善することを「疎通(そつう)経絡」といい、鍼灸治療が最も得意とするところです。


▲足の太陽膀胱経

治療は、腰部の兪穴や腰の圧痛や硬結に鍼やお灸をします。外界からの邪気は、経絡の中でも足の太陽膀胱経から侵入することが多く、足の少陽胆経にも影響します。足の太陽膀胱経は足の少陰腎経と表裏の関係にあり、腰部の治療には足の太陽膀胱経が第一選択になります。



タイプ別鍼灸治療

1.外邪(がいじゃ)
外界からの邪気(風、寒、湿など)が経絡に侵入して、気血の巡りを滞らせ、痛みを生じさせるタイプ。
冷たい雨にあたった、汗をかいた後に風にあたった、長期間湿気の多い場所で生活した、真夏に冷房で身体を冷やしたといったキッカケにより、腰部を守れなくなり外邪の侵入を許し腰痛を引き起こします。外邪は種類により、痛みの性質が異なります。
「風邪(ふうじゃ)」…痛みは比較的軽いが、部位はあちこちに移動する。
「寒邪(かんじゃ)」…痛みが強く下肢の冷えを伴い、温めると緩解する。
「湿邪(しつじゃ)」…重だるく感じ、雨や梅雨時期に悪化する。湿邪の停滞が長引き熱化することが多い。
おすすめのツボ:陽陵泉(ようりょうせん)、腎兪(じんゆ)、大腸兪(だいちょうゆ)など。

2.腎虚(じんきょ)
加齢や体質の虚弱、慢性疲労などにより、腰部を栄養できないタイプ。
腰は「腎の府」といい、腎の精気が腰に注いで栄養しています。そのため、加齢などにより腎の働きが弱ってくると、腰に痛みや重だるさを感じやすくなります。また、老化だけでなく、体質虚弱の人が無理をしたり、長時間の立ち仕事をしたりすると腎を傷め、腰痛を生じさせます。腎虚は身体が「虚」の状態であるため、外界からの邪気も侵入しやすくなります。痛みの特徴は、徐々に痛くなる、腰が重だるく力が入らない、疲れを伴います。
おすすめのツボ:腎兪(じんゆ)太渓(たいけい)、志室(ししつ)。冷えを伴う場合は、命門(めいもん)にお灸を加える。

3.瘀血(おけつ)
捻挫や転倒、重いものを持ち上げた時に痛みが起きるタイプ。
何かのキッカケで起こる腰部の捻挫、転倒や打撲などの外傷歴があります。腰部の外傷は経絡の流れを滞らせ、血流が流れにくくなることで痛みを生じさせます。瘀血による痛みは、起床時や座った状態が長く続くと悪化し、痛みの部位は一定です。
おすすめのツボ:委中(いちゅう)、膈兪(かくゆ)など。



 ※暮らしのアドバイス

普段から疲労をためず、十分な睡眠をとりましょう
適度な運動で筋肉を維持しましょう
長時間同じ姿勢を続けないようにしましょう
重い物を持つときは、しっかりとしゃがみ荷物を体に引き付けて持ち上げましょう